配当控除の分岐点は課税所得695万円へ:住民税統一後の申告戦略
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課税口座で高配当株を保有しているあなた。「配当控除って総合課税にすれば税金が戻るらしいけど、自分の年収帯で本当に得なのか確信が持てない」。そう思って毎年なんとなく源泉徴収のまま放置していませんか。
まず先に、この記事の判定軸を更新します。令和5年分以後は、上場株式等の配当で所得税と住民税の課税方式を別々に選ぶ前提が崩れました。通常の日本株配当で総合課税を検討する主な分岐点は、年収900万円ではなく、配当を含めた課税総所得金額等695万円以下かどうかです。
本記事では読者を 3 タイプに分けます。タイプ A:課税総所得金額等 695 万円超 × 日米バランス高配当層/タイプ B:課税総所得金額等 695 万円以下 × 日本株比率が高い層/タイプ C:米国ETF・J-REIT・投信分配金が多く、配当控除と外国税額控除の対象判定が混在する層。年収 900-1500 万円のシニアマネージャー層でも、判定は年収ではなく配当を含めた課税所得で行います。
実は源泉徴収のまま放置している状態は、タイプ A にとって逆に正解になっているケースが多いのです。配当控除は累進税率と住民税の総合課税をセットで見る必要があります。本記事では、課税所得・配当の種類・住民税改正の 3 軸で税区分を選び直す判断軸を整理します。
この記事でわかること
- 配当課税の 3 択(源泉徴収・申告分離・総合課税)の構造と、累進税率で逆転が起きる仕組みが理解できる
- 令和5年分以後の住民税課税方式統一により、主な分岐点が課税総所得金額等 695 万円へ移った理由を確認できる
- 日本株、米国ETF、J-REIT、投信分配金を分け、配当控除と外国税額控除を過大評価しない申告手順が組める
読み終わる頃には、タイプ A・B・C のどれに自分が当てはまるかを判定し、今年の申告で具体的に何を確認すべきかが決まっている状態になります。
配当控除は「総合課税にすれば得」という単純な話ではない
こんにちは、アンディです。今日も自由への一歩、課税口座の配当戦略から整理します。
年収 900-1500 万円層(事業会社の部長級・事業部長級に相当するシニアマネージャー層)は、累進税率で配当控除が相殺される「逆転ゾーン」に入っている可能性が高い読者層です。
なお本記事の判定軸は「年収」ではなく「課税総所得金額等」です。課税所得とは、年収から給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除などの各種控除を差し引いた後の金額です。さらに総合課税を選ぶ配当は、その判定所得に含めて考えます。給与だけなら 690 万円台でも、配当を足すと 695 万円超のゾーンに入ることがあります。
結論から先に出します。令和5年分以後は、通常の日本株配当で総合課税が有利かを見る主な分岐点は、課税総所得金額等 695 万円です。695 万円を超えると所得税率が 23% になり、復興特別所得税と住民税まで含めた総合課税の概算実効税率が、申告不要・申告分離の 20.315% を上回りやすくなります。
ではまず、配当課税の 3 択がそれぞれどういう構造なのか、見ていきましょう。
配当課税の 3 択:源泉徴収・申告分離・総合課税の構造を整理する
なぜ逆転が起きるのか。それを腑に落とすには、まず配当課税の 3 択を構造として押さえる必要があります。順に整理しましょう。
源泉徴収(申告不要):シンプルだが節税余地は限定的
源泉徴収は、証券口座の段階で 所得税 15.315% + 住民税 5% = 20.315% が自動的に天引きされ、それで課税関係が完結します。確定申告は不要で、手間という意味では最もシンプルです。
ただし損益通算(譲渡損失と配当益を相殺)や繰越控除(損失を翌年以降に繰り越す)を使いたい場合は、申告分離課税の検討が必要です。譲渡損失を抱えていても、申告しなければ配当の税金は戻りません。
申告分離課税:税率は同じだが損益通算が使える
申告分離課税は、税率自体は源泉徴収と同じ 20.315% ですが、確定申告をすることで 株式譲渡損失との損益通算 と 3 年間の繰越控除 が使えます。
年内に売却損が出ていれば、申告分離でその損失と配当益を相殺できます。複数証券口座を使い分けている層には 口座をまたいだ損益通算 が効きます。A 証券で配当益、B 証券で譲渡損というケースは申告分離でしか相殺できず、税率は同じでも 実効税率を下げる手段 になります。
総合課税:配当控除が使えるが累進と住民税で逆転する
総合課税は、配当を給与所得などと合算して 累進税率 を適用します。その代わり 配当控除 が使えます(制度の詳細は国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」を参照)。
ここで誤解しやすいのが、1,000 万円ラインです。課税総所得金額等が 1,000 万円を超えると配当控除が一律で対象外になるわけではありません。配当所得の位置に応じて、超過部分では所得税側の控除率が 10% から 5% へ下がるなど、控除率が低くなる構造です。J-REITなど投資法人から支払を受ける配当等は、そもそも配当控除の対象外です。
「総合課税にすれば配当控除で税金が戻る」という説明自体は、課税所得が低いゾーンでは正しい場面があります。ただし令和5年分以後は住民税側だけ申告不要にする選択ができないため、所得税だけでなく住民税まで含めた合算で見る必要があります。具体的にゾーン分解しましょう。
分岐点は課税所得695万円へ:住民税統一後の実効税率を可視化する
ここからが本記事の核心です。令和5年分以後、上場株式等の配当所得等については、所得税で選択した課税方式が個人住民税にも適用されます。令和5年度まで可能だった「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という組み合わせは使えません(例: 岡山市FAQ、川崎市案内)。
概算表:695 万円以下 / 695 万円超で見え方が変わる
通常の日本株配当で、剰余金の配当等に係る配当控除を前提にした概算は次の通りです。所得税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」、配当控除は国税庁 No.1250、上場株式等の源泉税率は国税庁の上場株式等に関する案内を前提にしています。
- 330 万円超 695 万円以下:所得税 20% × 1.021 + 住民税 10% − 所得税配当控除 10% − 住民税配当控除 2.8% = 約 17.62%。申告不要・申告分離の 20.315% を下回りやすい。
- 695 万円超 900 万円以下:所得税 23% × 1.021 + 住民税 10% − 所得税配当控除 10% − 住民税配当控除 2.8% = 約 20.68%。20.315% をわずかに上回るため、総合課税が常に有利とは言えない。
- 900 万円超:所得税率が 33% 以上になり、配当控除を引いても総合課税の負担が大きくなりやすい。
この表はあくまで概算です。実際の結果は、配当の種類、所得控除、外国税額控除、損益通算、住民税の扱い、復興特別所得税の端数処理で動きます。ただ、旧来の「900 万円までは有利」という見方をそのまま使うのは危険です。
判定所得には配当そのものを含める
もう一つの落とし穴は、判定所得に配当そのものを含める点です。給与由来の課税所得だけを見て 690 万円だから安全、とは言い切れません。総合課税を選ぶ配当が 50 万円あれば、課税総所得金額等は 695 万円を超える可能性があります。
国税庁 No.1250 でも、配当控除の計算は「その年分の課税総所得金額等」を基準にしています。給与・副業・配当を合算した後の数字で見る。この順番を間違えると、還付されると思って申告したのに住民税側で不利になる、というズレが起きます。
米国ETF・J-REITは配当控除ではなく対象判定を分ける
日米バランス型のポートフォリオを組んでいる読者にとって、配当の種類分けは重要です。米国 ETF の配当や J-REIT の分配金は、日本株の剰余金配当と同じように配当控除を使えるとは限りません。J-REITなど投資法人から支払を受ける配当等は配当控除の対象外です。
米国 ETF 配当は外国で源泉徴収された税額がある場合、外国税額控除を検討します。ただし外国税額控除には控除限度額があり、外国で引かれた税金が必ず全額戻るわけではありません(仕組みは国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」を参照)。
日米バランス型を組んでいる層にとって、総合課税で得られる控除メリットは日本株部分に限定されやすく、ポートフォリオ全体で見ると効果が薄まります。課税総所得金額等 695 万円超 × 日米バランス層 という条件が揃うなら、総合課税を選ぶ前に必ず申告分離・申告不要との比較が必要です。
では自分のタイプを確定させ、今年の申告で何をすべきか。次章で 5 ステップに落とし込みます。
タイプ別アクション:今年の申告で何をすべきか 5 ステップで決める
ここまでで「課税総所得金額等 695 万円超では総合課税が常に有利とは言えない」という構造は見えました。最後に、自分のタイプを特定して、今年の申告で何をすべきかを落とし込みます。
タイプ A・B・C の見方
リードで提示した 3 タイプを整理します。
- タイプ A:課税総所得金額等 695 万円超 × 日米バランス高配当層 → 申告分離または申告不要を軸に比較。日本株配当を総合課税に入れる前に、20.315% の申告分離・申告不要と比較します。譲渡損失があるなら申告分離の損益通算も確認します。
- タイプ B:課税総所得金額等 695 万円以下 × 日本株比率が高い層 → 総合課税で配当控除を検討。ただし配当を足した後も 695 万円以下か、扶養・配偶者控除・国保・各種所得制限への影響がないかを確認します。
- タイプ C:米国ETF・J-REIT・投信分配金が多い層 → 配当控除の対象外を先に分ける。米国 ETF は外国税額控除、J-REIT は配当控除対象外、投信分配金は商品ごとの扱いを確認し、日本株と同じ箱に入れないことが重要です。
今日から実行できる 5 ステップ
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配当控除や損益通算の申告実務を整理したいなら、クラウド申告ソフトという手もあります。ただしソフトは判断そのものを代替するものではありません。ご自身の申告ボリュームに見合うか比較して判断してください。
タイプが見えたら、あとは手を動かすだけです。
- 源泉徴収票と控除額から前年の課税所得を確認:給与所得控除後の金額から所得控除を引き、配当を総合課税に入れる場合は配当も含めて 695 万円以下かを見ます。
- 特定口座年間取引報告書で配当内訳を分ける:日本株配当、米国 ETF、J-REIT、投信分配金を分けて拾います。配当控除の対象外を先に外します。
- 譲渡損失と繰越損失の有無を確認:損益通算や繰越控除を使えるなら、申告分離課税の価値が上がります。
- e-Tax で 3 パターンのシミュレーションを実施:源泉徴収のまま・申告分離・総合課税の 3 パターンで還付額と住民税影響を比較します。迷う場合は税理士へ確認してください。
- 来年以降の日米比率と税区分をセットで再設計:日本株は配当控除の対象判定、米国 ETF は外国税額控除、J-REIT は対象外という前提で、買い増し比率を調整します。
ここまでで打ち手は見えてきました。次章では、改めて自分のタイプを確認し、来年の自由に向けた一歩を踏み出すための自己診断に進みます。
あなたはタイプ A・B・C のどれですか
あなたは「総合課税にすれば得」という曖昧な理解から卒業しています。課税総所得金額等 695 万円ラインと住民税改正後ルールを押さえれば、自分がどのタイプに該当するかを確認するだけで、今年の申告で何を比較すべきかが決まる状態に変わります。
そのうえで、日本株は配当控除の対象判定、米国 ETF は外国税額控除、J-REIT は配当控除対象外という配当の種類 × 税区分のセット設計こそが、課税口座を持つ高所得サラリーマンが実効税率を管理する現実的な打ち手です。
この判断は一般論だけで決め切れません。所得控除、配当額、譲渡損失、扶養・配偶者控除、自治体の住民税、外国税額控除の限度額で結果が変わります。最終判断は e-Tax の試算や税理士確認で固めてください。
あなたの課税所得は A・B・C のどれですか。関連する論点として「副業赤字を活用した損益通算スキーム」や「日米バランス高配当ポートフォリオの組み方」も別記事で深掘りしていますので、自分のタイプに合わせて次の一歩を選んでみてください。
数字に強く、人にやさしく。今日の申告判断が、来年のあなたの自由を少しだけ広げてくれます。
免責事項
本記事は筆者個人の見解・体験に基づく情報提供であり、特定の金融商品の売買や投資手法を推奨・勧誘するもの(投資助言)ではありません。記載した試算・将来予測は筆者個人の意見で、将来の成果を保証するものではありません。投資・保険・税務等の最終的な判断は、ご自身の責任で、必要に応じて証券会社・税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談のうえ行ってください。詳細は免責事項をご覧ください。
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