がん保険が要る人・要らない人:就労不能リスクと治療費リスクを分けて考える
年収が上がり、新 NISA も埋まり、資産も貯まってきた。そんなあなたが、保険証券を眺めて「このがん保険、本当に必要なんだっけ?」とふと立ち止まる瞬間があるなら、この記事はあなたのための整理です。
リベ大の『がん保険不要論』は知っている。けれど、自分のケースに当てはまるかは確信が持てない。そんなモヤモヤに、収入構造という判断軸を提示します。なお本記事で繰り返し登場する「CF(キャッシュフロー、毎月入ってくる現金の流れ)」と「自家保険化(民間保険に頼らず、自分の収入構造でリスクをカバーすること)」は、判断の中核となる 2 つの概念です。
この記事でわかること
- がんに伴う経済リスクを治療費・就労不能の 2 つに分けて評価する方法が分かる
- CF(キャッシュフロー)4 本柱(配当 40% / 不動産 40% / 債券 20%)で就労不能リスクを自家保険化する構造が理解できる
- CF 構築度・流動資産・扶養有無の 3 軸で、自分が解約・部分残し・継続のどのタイプかを判断できる
読み終わる頃には、あなたが自家保険化できる層なのか、まだ保険で補完すべき層なのかを、年収帯ではなく自分の収入構造から自分の頭で判断できる状態になっています。
がん保険、本当にいるのか?年収では決まらない理由
こんにちは、アンディです。今日も自由への一歩、今日はがん保険の話から始めます。
リベ大で「がん保険は基本不要」という話は耳にしている。けれど自分のケースに当てはめてよいかは確信が持てない。保険料の引き落としを見るたびに、モヤモヤだけが残る。この判断軸は、私が不動産投資と株式投資を並行してきた中で、自然と見えてきたものです。
この記事の結論を先に置きます。がん保険の要否は「年収」では決まりません。決め手は「収入構造」、つまり毎月どこから現金(キャッシュフロー、以下 CF)が入ってくるかです。そしてがんに伴う経済リスクは、ひとくくりにせず「治療費リスク」と「就労不能リスク」の 2 つに分けて評価します。前者は公的医療保険と流動資産で多くがカバーできるため、本当の論点は後者です。就労不能リスクを CF で自家保険化できているか、これが判断軸です。
なお、この判断軸が成立するのは「CF 4 本柱がある程度構築できている」「扶養家族がいない」など一定の条件下である点は先に共有しておきます。条件を満たさない読者層には保険継続が合理的な場合もあり、後段のタイプ分岐で具体的に示します。
ではまず、治療費リスクがどこまで公的制度で吸収できるのか、実額で確認しましょう。
治療費リスクは公的医療保険と流動資産で吸収できる
この章では分解の片方、治療費リスクを扱います。結論は、治療費リスクは高額療養費制度と数百万円の流動資産があれば、民間保険なしでも吸収できる範囲に収まる、です。ただし後述のとおり、流動資産が薄い読者・扶養家族がいる読者にはこの整理がそのまま当てはまらない点だけ、先にお断りしておきます。
「がん = 経済的破綻」を内訳に分解する
多くの人は「がんになったら経済的に終わる」という恐怖から、内訳を確認せずに保険を買っています。ここが本質的な問題です。
がんに伴う経済リスクは、MECE(漏れなくダブりなく分ける手法)で 2 つに切り分けられます。
- 治療費リスク:入院・手術・抗がん剤などの支出
- 就労不能リスク:治療中に働けず、給与収入が止まることで生じる収入減
この 2 つは性質が違うので、対処法も別物です。にもかかわらず、市販のがん保険は両者をひとまとめにして保険料を取りに来ます。まず分けて見るところから始めましょう。
治療費リスクの実額:高額療養費制度の守備範囲
本記事の読者層に多い年収 770-1,160 万円帯では、健康保険の高額療養費制度(年収帯ごとに月あたりの自己負担上限が決まる公的制度)により、月あたりの自己負担上限は 17 万円弱が目安です(具体額・最新の改正内容は厚労省サイトで自分の年収帯を必ず確認してください)。仮にがん治療で 12 ヶ月連続で上限に張り付いたとしても、年間自己負担はおおむね 100-200 万円の範囲に収まります。「がん = 数百万〜数千万円が飛ぶ」というイメージとは桁が一つ違います。
公的保険外コストを足しても、流動資産で吸収できる
もちろん公的保険でカバーされないコストもあります。先進医療費(保険診療と自由診療の中間で、一定の条件下で認められた先進的治療の費用)、差額ベッド代(個室など保険対象外の病室を選んだ際の追加費用)、自由診療、通院交通費などです。これらを足してもざっくり +100-200 万円の範囲に収まることが多い(公的保険外コストは個別事情で大きく変動するため、ここでの数値は一般的な目安・試算としての参考値です)。
合計しても、流動資産(即現金化できる預金など)を 200-500 万円確保できていれば、治療費リスクは民間保険なしで吸収できます。月収換算で言えば、額面月収の 6-12 ヶ月分が一つの目安です。生活防衛費としての推奨水準(生活費 6 ヶ月分)に少し上乗せした水準、と考えると現在地が掴みやすいはずです。
一方で、流動資産が 200 万円に届かない読者、家族扶養がある読者は、この整理がそのままは当てはまりません。治療費自体は公的制度で抑えられても、緊急時の現金クッションが薄ければ家計は揺れます。該当する場合は第 4 章タイプ C の整理を先に確認してください。
ここまではリベ大でも触れる基本論点で、私もこの整理に同意しています。本ブログの独自価値は、この先の「就労不能リスク」の扱いにあります。治療費の話だけで保険判断を終えると、半分しか見ていないことになる。続く章で、もう半分を見にいきます。
本質は就労不能リスク:CF 4 本柱で自家保険化する構造
では本当に向き合うべきリスクは何か。残された本質論点は「就労不能リスク」です。治療費そのものが家計を壊すのではなく、治療中に働けず給与収入が止まることが家計を壊す。ここをどう手当てするかが、がん保険の要否を判断する中核です。ここから先がリベ大の不要論を「なぜ成立するのか」の構造から解き直す、本記事の独自パートになります。
民間のがん保険は、本来この 2 つを混ぜて 1 商品で対応しようとしています。だから判断が難しくなる。リスクを分解し、片方は公的制度、もう片方は自分の収入構造で受ける、と分けて考えれば、保険に頼らずに済む道筋が見えます。
CF 4 本柱という自家保険の中身
ではどう自家保険化するか。私が組み上げてきている出口時のイメージは CF 4 本柱(配当 40% / 不動産 40% / 債券 20%、+α でストック型ビジネスの CF)です。Logic Tree(複数の要素を階層的に分解する思考フレームワーク)で性質ごとに分解します。
- 配当(40%):一度仕組みを作れば継続的に入る性質。市況で評価額は揺れますが、入金そのものは継続。高配当株(配当利回りが高い株式)・累進配当銘柄(毎年配当を維持または増やす方針の企業)・米国 ETF(複数銘柄をまとめて売買できる投資商品)を組み合わせる構成
- 不動産(40%):賃料(保有物件の入居者から得られる月次収入)というキャッシュフローは安定。空室・修繕リスクはあるものの、月次入金の予測可能性が高い
- 債券(20%):利息で底支え。為替リスクはありますが、配当・賃料が揺れた局面でクッションになる
なぜこの配分か。配当と不動産を 40% ずつに据えるのは、金融資産(市況連動)と実物資産(賃料連動)でリスク源を二分し、相関を下げるためです。さらに就労不能シナリオで具体化するとこうなります。仮に月の生活費が 30 万円の家計なら、配当で月 10 万円・賃料で月 12 万円・債券利息で月 5 万円を積み、残り 3 万円を生活防衛費の取り崩しで埋める、といった組み立てが可能です。給与が止まっても、性質の違う 3 つの入金源が時期をずらして家計に届くため、1 つが凹んでも家計全体は持ちこたえます。
+α のストック型ビジネスは、物販・ブログ・オンライン教材販売・SaaS など、一度仕組みを作れば手離れする収益源を指します。給与の代替というよりは、4 本柱を補強する「5 本目」の位置づけです。
「給料が止まる」を私は一度体験している
私は不動産投資歴 7 年、株式投資歴 10 年以上で、高配当株・賃料 CF を組み合わせて積み上げてきました。最近は新 NISA(月 30 万円積立、オルカン中心)も並行で活用しています。
重要な点として、過去の転職期間中に長めの休みを取り、給料が完全に止まった状態で生活した経験があります。期間としては数ヶ月程度で、月次の収入ゼロを実地で体感し、貯金が減ることへの感情も確認しました。ただし、これはあくまで数ヶ月の体験であり、がんで 1-2 年働けない状況とは期間・心理負荷ともに別物です。同列に「擬似テスト完了」と扱うつもりはありません。それでも、月次収入ゼロという状態を一度肌で知っているか否かは、家計設計の前提を変えると感じています。
その経験から言えるのは、年 200 万円以上の不労収入が継続的に入る状態を作れていれば、がんで 1-2 年働けなくなっても生活が崩壊する確率はかなり下げられるということです。月にすれば 17 万円弱。例えば月 30 万円の生活費の家計なら、配当 + 賃料 + 債券利息で月 17 万円を作り、残り 13 万円を生活防衛費から月次で取り崩す設計でも、500 万円の防衛費があれば 3 年以上は持つ計算になります。年 200 万円の不労収入を配当だけで作る場合、配当利回り 4% 換算で 5,000 万円規模の高配当資産が必要、と逆算できる規模感です(実際は配当・賃料・利息のミックスで作るので、必要な金融資産はこれより小さくなります)。
これが「自家保険化」の中身です。民間保険会社にリスクを移転する代わりに、自分の収入構造そのものを受け皿にする。リベ大の不要論が成立する根っこには、この CF 構造の存在が暗黙の前提として置かれています。
ただし、これはあくまで CF 4 本柱が一定水準まで構築できている人の話です。自分がそのラインを越えているのか、まだ手前なのか。次章で、収入構造から自分のタイプを判定する 3 タイプ分岐に進みます。
3 タイプ分岐で判定する:あなたはどのタイプか
がん保険の要否は年収ではなく収入構造で決まる、と見えてきました。では具体的にあなた自身はどう判断するか。CF(キャッシュフロー)構築度・流動資産・扶養有無の 3 軸で 3 タイプに分け、それぞれのアクションを示します。判定基準の「年間不労収入 200 万円」は、配当利回り 4% 換算で約 5,000 万円の高配当資産に相当する規模感、と置いて読み進めてください(実際は配当・賃料・利息のミックスでこの水準を作ります)。
タイプ A:自家保険化が成立する層
年間不労収入 200 万円以上 × 流動資産 500 万円以上 × 扶養なしに全て当てはまる読者です。治療費は公的制度と流動資産で吸収でき、就労不能時の生活費も CF 4 本柱で賄える状態なので、がん保険の解約または加入見送りが合理的な判断です。
私自身もこのタイプ寄りで、現在加入しているのは火災保険のみです。自家用車を所有していないため自動車保険には未加入です。就労不能保険・死亡保険・病気関連の民間保険も持っていません(参考:一般論として、車を所有するなら自動車保険は必須です)。ただしこれは「不動産 CF が一定積み上がっている」「扶養家族がいない」という前提条件があってこその選択であり、誰にでも勧められる判断ではない点は強調しておきます。
解約時の留意事項も先に共有しておきます。終身がん保険は解約すると返戻金がほぼないタイプが多く、払い込んだ保険料は戻ってきません。また、一度解約すると同条件での再加入はできない(年齢上昇・健康状態の変化で再加入時の保険料は上がる、あるいは加入自体を断られる)点も前提に。証券の解約返戻金額と告知事項を必ず手元で確認してから動いてください。
タイプ B:部分的に保険を残す層
CF 基盤を構築中 × 流動資産 200-500 万円 × 扶養なしの読者です。治療費リスクは概ね吸収できますが、就労不能リスクの自家保険化はまだ途上。この場合は最低限の終身がん保険(保障 100-300 万円程度の小型商品)のみ残し、医療特約や先進医療特約は外す方向で見直すのが妥当です。保険料を圧縮し、浮いた分を CF 構築に回す設計に切り替えます。
タイプ C:保険を継続すべき層
CF 基盤未構築、流動資産 200 万円未満、家族扶養ありのいずれかに該当する読者です。この場合はがん保険を継続しつつ、CF 基盤構築を優先するのが筋です。順番を間違えて先に保険を外すと、就労不能時にダイレクトに家計が崩れます。扶養がある層は特に、保険を「家族への思いやり」の手段として割り切り、保険料を抑えた商品(掛け捨てがん保険・収入保障保険)で残しつつ、配当・賃料の積み上げを並行で進めるのが現実解です。
今日から動ける 5 ステップ
次の 5 ステップで判定と行動を進めてください。
- 自分の年収帯の高額療養費上限を厚労省サイトで確認
- 直近 12 ヶ月の不労収入を集計し年換算
- 流動資産残高(即現金化可能分)を集計
- 3 つを並べて A / B / C のどのタイプか判定
- 該当タイプのアクションを、保険証券を見ながら 1 つ実行
判断軸とアクションは揃いました。最後に、あなた自身が出した結論をどう扱うかに進みましょう。
保険は数字と思いやりの両輪で決める
判断軸は揃いました。では、あなた自身の判定結果をどう扱うかに進みましょう。
あなたは A・B・C のどのタイプでしたか。自分のタイプを一言で言語化してから保険証券を眺め直すと、見直すべき特約が明確になります。「就労不能を CF でカバーできているなら、医療特約や先進医療特約は重複ではないか」という問いが、証券を読む解像度を一段引き上げてくれるはずです。
ここでリベ大の『がん保険不要論』を、本記事の整理に接続し直しておきます。不要論は「CF 構造ができている人」には正解、「これから作る人」には段階的に当てはまる正解、という段階的フレーミングで捉えるのが実情に合います。タイプ A は不要論をそのまま適用、タイプ B は保険料を圧縮しながら CF 構築へ移行、タイプ C は保険で家計を守りつつ CF を積み上げる順序。同じ「不要論」でも、現在地によって適用の仕方が変わるだけで、不要論自体は本質を突いています。
次の一歩として、本ブログでは CF 4 本柱の構築論や不動産投資の出口戦略を扱った関連記事も用意しています。まだ CF 基盤構築の途中にいる方は、保険の見直しと並行してそちらも読み進めてみてください。
数字に強く、人にやさしく。またユーカリでも食べながら、お会いしましょう。
